経営と経理
インボイス対応 請求書のない取引:賃貸契約
いよいよ今月からインボイス制度が開始されます。
10月1日以後に行った課税仕入れは、原則として、インボイスの保存等がなければ仕入税額控除を適用することはできません。
今回は、毎月の取引の中で請求書のない賃貸契約について確認しておきましょう。
Q.
弊社は、事務所や倉庫を賃借契約しており、毎月口座振替により家賃を支払っています。
賃貸契約書は締結時(令和5年9月30日以前)のものがありますが、請求書や領収書の交付は受けておらず、家賃の支払の記録としては、銀行の通帳の口座振替の記録だけです。
このような場合、インボイス制度の対応はどうすればよいですか。
A.
令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、不動産の貸主の適格請求書発行登録番号や消費税率、消費税額等の不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存し、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類(通帳)とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
国税庁のホームページで公開されているQ&Aでは、下記のように詳細記載されておりますので、こちらも併せてご確認ください。
国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」平成 30 年6月 (令和5年4月改訂による)問93
通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です。
この点、適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方(貸主)から一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受け、それを保存することによる対応も可能です。
なお、適格請求書として必要な記載事項は、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになりますので、契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
ご質問の場合には、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
また、口座振込により家賃を支払う場合も、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
なお、このように取引の都度、請求書等が交付されない取引について、取引の中途で取引の相手方(貸主)が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には貴社(借主)はその事実を把握することは困難となります(適格請求書発行事業者以外の者に支払う取引対価の額については、原則として、仕入税額控除を行うことはできません。)。
そのため、必要に応じ、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認してください。
(参考) 令和5年9月 30 日以前からの契約について
令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えありません。