経理のコツ
賃貸借契約を締結した場合
不動産の賃貸借契約を締結した場合、最初の支払時の仕訳は、特に注意が必要です。
最初の支払金額のなかには、賃料以外にも、敷金・礼金・火災保険料・仲介手数料・鍵交換費用等々、様々な要素が含まれているため、支払い金額をすべて「地代家賃」とするのは間違いです。
ひとつひとつの計上方法を確認してみましょう。
「地代家賃」等として費用計上します。
ただし、通常家賃は前払いですので、その場合には、支払時に「前払費用」として資産計上し、翌月に費用に振り替えます。
「敷金」や「預け金」等として資産計上します。
敷金は、退去時にクリーニング代等を差引かれて、差額は返金(敷金の不足がある場合には追加で支払うこともあります。)されますので、資産となります。
「長期前払費用」等として繰延資産に計上し、5年以内の賃借期間で均等償却します。
礼金は、「建物を賃借するために支払った権利金」のため、税務上の繰延資産に該当します。
なお、20万円未満の場合には支払時に費用計上することも可能です。
「保険料」等として費用計上します。
なお、契約期間が会計期間をまたぐ場合には、翌期対応分は「前払費用」として資産計上します。
「手数料」等として費用計上します。
・鍵交換費用、その他の費用
「消耗品費」または「雑費」等として費用計上します。
以上をまとめると、次のような仕訳になります。
【賃貸借契約時】
仕訳なし
【賃料等支払時】
例)日割り分家賃(1月日割り分):30,000円、ひと月分家賃(2月分):300,000円、敷金:600,000円、礼金:300,000円、火災保険料:120,000円(うち、翌期対応分:60,000円)、仲介手数料:324,000円、鍵交換費用:21,600円
合計:1,695,600円
契約期間:5年
(前払費用) 30,000円 / (現金預金) 1,695,600円
(前払費用) 300,000円
(敷金) 600,000円
(礼金) 300,000円
(保険料) 60,000円
(前払費用) 60,000円
(手数料) 324,000円
(消耗品費) 21,600円
【1月末】
(地代家賃) 30,000円 / (前払費用) 30,000円
【2月末】
(地代家賃) 300,000円 / (前払費用) 300,000円
※翌月以降も、支払時には「前払費用」を計上し、翌月末に「地代家賃」に振り替えます。
【期末】
(繰延資産償却費)60,000円 / (礼金) 60,000円
※300,000円÷60ヶ月×12ヶ月(支出事業年度の場合には、支出日からその事業年度終了の日までの月数)
【翌期】
(保険料) 60,000円 / (前払費用) 60,000円
【退去時】
例)クリーニング代等が300,000円かかり、敷金との差額300,000円が返金された場合
(修繕費) 300,000円 / (敷金) 600,000円
(現金預金)300,000円